第一回革靴論考~セメンテッド製法の優位性~

私はそこそこの男性革靴マニアだと思うが、巷に溢れる革靴評論には誤解が多いのが気になる。例えば靴はグッドイヤーウェルテッド製法に限るとか、ハイブランドのプレタポルテのセメンテッド製法のコレクション靴は出来が非常に悪いから買うべきではないとか。今回の論ではまずはそのような偏見と誤解を解いていくことに注力してみようと思う。

まずは革靴の製法を大別してみる。

1グッドイヤーウェルテッド製法(以下グッドイヤー)
2マッケイ製法(以下マッケイ)
3セメンテッド製法
となる。

*上記の製法の詳説していると、どれだけ文面があっても足りないので知らない方はネット等で検索をお願いしたい。

日本ではグッドイヤーがソール交換が何度でも可能で、かつ履いていくうちに自分の足に馴染むしっかりとした構成、等々の理由から一番であるとか雑誌でいわれているが、個人的な意見ではどの製法にも良さがあってどれが一番とは言い切れない。むしろセメンテッド製法にもグッドイヤーにはない良さが多々あると思うのだ。というのも、もしグッドイヤーがどの見地からも優れているならハイブランド、モード系ブランドはすべてグッドイヤーを採用するだろうし(ちなみにコレクションで採用された革靴はほとんどがセメンテッド製法かマッケイ)、また街の靴屋に並ぶ革靴はすべてグッドイヤーになるだろう。

まずセメンテッド製法が他の製法と比較して完全優位に立つのは圧倒的なコストの安さである。これは他の製法ではどう頑張っても勝てない。というのもセメンテッド製法は基本的に底を接着剤でくっつけるものだけだから、熟練した職人を養成する必要はない。そのため大量生産に適し、そしてコストパフォーマンスに長ける。他の製法にはどうしても熟練した職人が必要とされる(その出来、不出来によって大きく製品の差、価格の差が出る)。

これによって我々消費者は安価な革靴を享受できる。もし街に並ぶ靴がマッケイとグッドイヤーしかなくなったら5000円以下の革靴など買うことは到底できない、何度も繰り返して恐縮だが、マッケイもグッドイヤーもそれだけ人間の手による工程・手間隙がかかるからだ。その反面セメンテッド製法はソールの張替えはできないので履きつぶす革靴になってしまうのは残念だが。

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次にセメンテッド製法の優位性はコバ(1)がでにくい。というかコバを出そうと思わなければほとんど出さないことも可能だ。そのためデザインの自由性が他の製法に比べ遥かに高い。

(1)コバとはソールとアッパーをダシ縫いする際に外に出るでっぱりのこと。熟練した職人によるだし縫いの美しさを見れることは手作り靴の醍醐味である一方、コバが多くでることでスマートな靴にはなりにくくになる。

上に記したようにハイブランド、モード系が採用しているのはセメンテッド製法かマッケイが多いことは明白な事実だ。これはスーツとの相性を熟慮した結果である。あえて誤解を恐れずにいうとデザイナーが理想とするスーツはほとんどが軽いスーツであるような気がする。芯地がしっかりした重厚なクラシコイタリアといったものではなく、風が吹くとさらっと裾が揺れるような軽いスーツ。彼らは布地も極力、高い番手を使う。そう非常に神経の使うデリケートな生地。もし上記のようなスーツにグッドイヤーのコバが張ったある意味無骨な靴をスタイリングしようとすると完全に相反する。

このようにデザイナーが理想とするベクトルとグッドイヤーで作られた革靴の立ち位置はまったく違うのである。また彼らが理想とするのはあくまで絨毯の上、つまりショーで映える革靴である。日本の凸凹としたアスファルトを営業でガツガツ歩くなど想定しておらず論外だ。だからグッドイヤーのように履き続けて馴染んでいく靴は彼らの眼中にはない。

話をここら辺で勝手にまとめてみる。セメンテッド製法はデザイナーが理想とするスーツに合致し、またハイレベルな次元でのデザインを構築することができ、ショーで映える靴を作ることができる。だからこそあえて安価で大量生産(≠オートクチュール)の製法でもあえてセメンテッドを採用する。また高いデザイン性を廃せば大量生産、安価製造に向き商品の質も安定している。ここまで読んでくださった読者諸氏はもうお気付きだろうが、つまり革靴はそれ単体で評価されるものではなく、あくまでスーツと一体になって初めて評価可能なものなのである。

次回は今回では少々批判的になってしまったグッドイヤーウェルテッド製法について論じてみようと思う

 

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あだちたかや

著者: あだちたかや

百貨店勤務からのセレクトショップ店員