イタリア靴の大半はマッケイ製法である。マッケイ製法はイタリア以外にもまれにアメリカ靴に採用されることがあるが、本格靴の世界ではグッドイヤーウェルテッド製法ほど一般的ではないようだ。
マッケイ製法の長所は以前の記事で、言及したようにコバが出にくいことに加え、インソールに敷くコルクを限りなく薄くすることができる*。その反面、グッドイヤー製法のような履き馴染むことで、最良のフィット感を得るとかはなかなかできないし、オールソールの交換はせいぜい2回までが限界である(靴自体を痛めてしまう可能性を孕むため)。
イタリアの文化として衣服もそうだが、堅強さとか長く使うことを前提に作られていないようである。
さて今回も前回に続いてネットから拝借した画像で恐縮だが、マッケイ製法について簡単に説明していくことにする。上の写真で太いマッケイステッチと呼ばれるステッチがインソールとアウトソールを直に縫っているのがお分かりだろうか。このマッケイステッチのお陰でコルクを薄くできるし、コバを極力張らないようにすることができる。またグッドイヤーウェルテッド製法に比べれば、作業の工程を簡略化もできる。
千代田区靴小売共同組合HPより 図にすると上記のものが分かりやすいのではないだろうか。 *余談になるが靴は大半が牛皮素材である。そして素材はそれぞれの部分が裁断されて、売買にいたる。イタリアでは甲の部分とインソールに用いるショルダーが高値で取引され、一方、イギリスでは本底や踵に用いる固いバットといわれる部分が高値で取引される(ちなみにこの外見にお金をかけるというイタリアの考え方は個人的に嫌いではない)。
ところで自分の靴がマッケイ製法かグッドイヤー製法かを簡単に見分けるコツはインソールを見るのがいい。インソールの内側から縫ってある形跡があればほぼ間違いなくマッケイ製法とみていい。
gucciの革靴 インソール部分
ここからは小生のマッケイ製法の靴をいくつか紹介させていただく。これはある百貨店で購った3万円くらいの安いマッケイ製法のイタリア靴。製作者の意図であえてコバを出しているが、トゥの先のメダリオン&パーフォレーションがエロティックだし、ロングノーズのデザインも気入っている。この価格にしたら革の質は柔らかくて良好。それなりに履きつぶしていて一度踵の部分だけ修理に出し、ビブラムソール*に変更した。 *ビブラムソールとは有名なゴムソールメーカーのこと。種類が豊富、タフ、そして値段も比較的安価なことから、ソール交換の際よく用いられる。
こちらは某セレクトショップ別注のCOLEHAAN。COLE HAANといえばアメトラとして有名なブランドだからグッドイヤー製法と思いきや、マッケイ製法となっている。
マッケイ製法の証拠にインソールから縫ってあるし、上の写真で分かるようにソールが限りなく薄いのがお分かりだろうか。またコバもまったく出ていない。実際、履いてみるとコルクを詰めてないのではと感じるくらいクッション性がない。この靴も履きつぶしていて、実は片方の靴はソールに穴が空いてきた。修理をしようと思って街の修理屋に一度持ち込んだのだが1万円程かかると言われて、どうしようかいまだ悩んでいるところ。オールソールを交換すると靴の修理には結構な値段がかかるものだ。
今回で3回にわたった小生の革靴論考は終了とする。簡単にまとめてみると、以下の3点に集約される。
1革靴の製法はどの製法も長所と短所があって、どれがいいかは一概に断言できない。
2革靴をコレクションで集めるなら、それはそれで全く構わないが、決して革靴は単体で評価されるべきものではなくスーツとの調和があってこそ評価されるもの(革靴至上主義への批判)。
3セメンテッド製法だから作りが悪いとか、舶来品だから素晴らしいとか偏見に囚われず、実際に自分で色々と履いて体験することによって判断して欲しいこと。
最後になりますが、3回にわたり読んでくださり有難うございました。
[関連記事] // Dec.16.13 リンク修正//
第一回革靴論考~セメンテッド製法の優位性~ http://annex.transtyle.jp/columns/60
第二回革靴論考~グッドイヤーウェルテッド製法は靴作りの基本~ http://annex.transtyle.jp/columns/34