第二回革靴論考~グッドイヤーウェルテッド製法は靴作りの基本~

 

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正直なところ「第一回革靴論考」はかなりのファッション通・マニアしか読んでくださらないのではないかと思っていた。実際に20代前半のある女性に小生の記事を見てもらったところ「何が書いてあるのかまったく分かんな~い」との感想をいただいた。しかし意外なことに(小性の予想を遥かに超えていた)読書の方には好評だったようなので、早速「第二回革靴論考」を書いてみようと思う。
第一回はセメンテッド製法の見過ごされがちなプラスの側面に焦点を当てて書いてみた。今回はグッドイヤーウェルテッド製法(以下グッドイヤー)である。 まず、グッドイヤーの概説をネットから拝借した画像で一緒に確認してみよう。

 

 

 

前回でグッドイヤーは何度も張替え可能と書いたがその理由が上記にある。手元にある資料によると「リブと呼ばれるモノレールの線路状のパーツが中底に接着され、インナー、アッパー、ウェルトがつまみ縫いされる。縫いはインソールにかかっていない。

リブが作る空間を埋めるための厚めのコルクが必要(最高級靴読本 世界文化社)」と記述されている。 縫いがインソールにかかっていない。このおかげでアッパーさえ損傷しなければ半永久的にソールやヒールの張り替えができる。ちなみにマッケイ製法の場合は「革靴とスーツにかんする雑感」で素晴らしい記事を書いた著者のGUCCIの写真で確認していただきたいのだが、インソールごと縫うのでオールソールの交換となると通常1回が限度だと思う。というのもソール交換で靴を傷めてしまう危険性を孕んでいるからである。

またイギリス式の場合のグッドイヤースタイルの大半は、ウェルトとアウトソールの間にミッドソールを挟んだダブルソールを用いることが多い。このため、ソールの薄いマッケイに比べると自分の足に馴染むにしたがって、フィット感がよくなっていくことが多い(もっとも作業が実に大変で「一生ものですよ」と店員に促され買った英国製のTRICKER’Sは7年経ってもまったく足に馴染まず、リサイクルショップに売り払ってしまった経緯がある…)。

厚めのコルクで自分の足にフィットしたグッドイヤーの履き心地は最高である。靴が足に吸い付くというか、革靴の重さすら忘れてしまう。スニーカーを履くよりよほど楽である。足の汗もコルクが吸収し、一日履いても足の疲れなどほとんど感じない。これはグッドイヤーを履きこんだものしか分からない特権であろう。

 

これは筆者の10年戦士の米国製「ALLEN EDMONDS」だが実にタフで、履き心地も最高。またどことない無骨さがアメリカを感じさせるし大変気に入っている。このクラスのグッドイヤーは3万円代で手に入るはずである。一生物となれば非常に安いものではないかと筆者は考えているのだが。

一方グッドイヤーでも米国製ならALDEN、英国製ならEDWARD GREENといった高価な対価を払わないといけないものもある。それはそれで美しいし、ピスポーク(フルオーダー)になれば30万は覚悟しないといけない。 たしかに服飾評論家の落合正勝氏が「丁寧に作られた靴は芸術作品に値する」といったのには私も賛同するけど(実際、現場で働いていた時にそんな靴を見てうっとりしていたので)、日本人の感覚からすると3~6万の相場が現実的だと思うし、靴は以前の記事で書いたようにそれ単体で評価できるものではないから相応のスーツも備えては欲しいから。

そこで、これから本格靴を買おうとしてるビジネスマンがいるとしたら、まずは3~6万円代のグッドイヤーを薦めたい。 そしてデザイン等は読者のお気に入りので構わないので3足購ってほしい。どうしても一足だと靴の寿命も短くなる。3足持っているなら1週間で足を入れる回数も1~2回程度だから、これは靴の環境にとってベストである!!
次回はイタリア靴によくみられるマッケイ製法について論じる予定。

[関連記事] 第一回革靴論考~セメンテッド製法の優位性~ http://annex.transtyle.jp/columns/60
マッケイ製法の特徴ーセクシーな靴(第三回革靴論考) http://annex.transtyle.jp/columns/249  

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あだちたかや

著者: あだちたかや

百貨店勤務からのセレクトショップ店員