私とオーディオ、そして悦楽

昨日は中腰のまま4時間も半田ごてを握っていた。たった一つのボリュームを交換するだけのために、それも21時~1時までぶっ通し。バカにされたって構わない。だって私にとってオーディオは趣味を超越した悦楽のような存在だから。これがなかったら私がどうなっていたかのかを想像すると恐ろしい。私はオーディオを通して素晴らしい音楽の甘美を知った。

デジタルの進歩で音楽を聴く行為は大きく変わった。アナログの頃に比べてほとんど投資をしなくてもいい音を聴くことができるようになったのだ(簡単にいうと音質の劣化が著しく少なくなったため)。私はiPhoneユーザーなのでデジタル技術の進歩の恩恵は享受しているし体感している一人である。また音楽を聴く機械がiPodと付属のイヤホンであろうと1000万を越すオーディオシステムだろうと音楽を聴く行為はそのものはまったく変わらない。しかし例えばフルトヴェングラーの壮大で深い音楽を、あるいはキース・ジャレットの繊細で緻密なピアノのタッチを聴くのであれば、ある程度の音楽システムであって欲しいと思うのが私個人のささやかな願望である。というのもそこにはiPodでは聴けないものが存在しているからだ。それはきっと

「体、身体そのものに訴えかける深い深い感動」

今は金がないから使いこなすことで、そこそこの音を出すことに精を出している。お金があって機器を変えていたころも楽しかったが、実は今の方がもっと楽しい。というのも「自作、改造、使いこなし」で音楽は甘美な音にガラッと変わるからである。荻窪の名レコード店「月光堂」の主人に言わせれば「オーディオは使いこなし」。まさにその通りで、普及価格帯の品物でも使いこなしで素晴らしい音を出すことは十分に可能なのだ。

「難しい機械のことは何も知らないし、複雑なシステムにも興味ないし…」という読者の方々にはまずは近くのカメラ系量販店でも全く構わないので、オーディオ目線での普及価格帯(5~10万)の製品で自分の好きな音楽を聴いてみて欲しい(CDなどの音源を持ち込めば好みの音楽で視聴することができる)。きっと違いがわかるはずである。この価格帯のシステムでも普通の人の感覚からすれば高いと思うかもしれないが、ワンピースを2、3着を買うことを考えてみればさほど高いものではない。家で音楽を聴く時間はトータルにすると長いものだ。それによって得られるの精神的な豊かさを考えれば、感動できるオーディオシステムはそれほど値が張るものではないということだ。

もう少し詳説するとオーディオ選択の際に大事なのはスピーカー。これに尽きる。というのも、イヤホン世代の方にはお分かりにならないかもしれないが音楽製作の多くはスピーカーから音を出すこと前提にプロデュースやマスタリングなどが行われている。またスピーカーはオーディオシステムの中で最大のトランスデューサー(変換機)でもある。まずは大好きな音を出すスピーカー(デザイン、プロダクト等の相性だけでもOK)を選ぶことに注力して選んでみて欲しい。きっとそこには新たな音楽の感動が待っているはずである。

Arthur:あだちたかや

 

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あだちたかや

著者: あだちたかや

百貨店勤務からのセレクトショップ店員